Web制作の提案依頼書(RFP)とは【制作会社からより良い提案を引き出そう】

提案依頼書(RFP)とは?

Webサイトの制作やリニューアルを検討する際、「複数の制作会社から見積もりを取って比較したい」と考えるのは自然なことです。しかし、各社に同じように要望を伝えたつもりでも、出てくる提案や見積もりの内容がバラバラで、どこに依頼すれば良いか分からなくなってしまった、という経験はありませんか?

Web制作は、単に「見た目がきれいなページを作ること」ではありません。ビジネスの課題を解決し、目的を達成するための重要な手段です。制作会社に自社の想いや要望を正確に伝え、最適な提案を引き出すためには、しっかりとした準備が欠かせません。

そこで重要な役割を果たすのが、「提案依頼書(RFP)」です。

RFPは “Request for Proposal” の略で、Web制作会社などの発注先候補に対して、具体的な提案を依頼するための書類です。RFPには、Webサイト制作の目的、要件、予算、スケジュールなどをまとめて記載します。

この記事では、Webサイト制作を成功に導くための「提案依頼書(RFP)」について、そのメリットや作成前の準備、具体的な書き方まで、初心者の方にも分かりやすく解説します。RFPの作成は少し手間がかかる作業ですが、プロジェクトを成功させるための羅針盤となります。ぜひこの記事を参考に、貴社に最適なパートナーを見つけるための一歩を踏み出してください。

提案依頼書(RFP)を作成する4つのメリット

RFPを作成するには時間も労力もかかりますが、それに見合うだけの大きなメリットがあります。具体的なメリットを4つのポイントに分けてご紹介します。

メリット① 依頼内容が整理され、社内での認識統一が図れる

RFPを作成する過程は、Webサイト制作の目的やゴール、必要な機能などを具体的に言語化していく作業です。

「なぜWebサイトをリニューアルするのか?」
「デザインが古いから」といった漠然とした理由だけでなく、「スマートフォンユーザーの離脱率が高い」「問い合わせ件数を現在の1.5倍にしたい」など、具体的な課題や目標を掘り下げていきます。
「誰に、何を伝えたいのか?」
ターゲットユーザーの人物像(ペルソナ)を明確にし、そのユーザーにどのような情報を提供し、どんな行動を促したいのかを考えます。

このプロセスを通じて、担当者間はもちろん、経営層や関連部署との間でもプロジェクトに対する認識を合わせることができます。社内の意思が統一されていると、その後のプロジェクト進行もスムーズになります。

メリット② 制作会社から質の高い提案を受けられる

詳細なRFPは、制作会社にとって「質の高い提案」を作成するための重要な道しるべとなります。

依頼内容が曖昧だと、制作会社は「おそらく、こういうことがしたいのだろう」と推測で提案を作成せざるを得ません。その結果、見当違いの提案が出てきたり、各社が好き勝手な解釈で提案するため、内容に大きなばらつきが生まれたりします。

RFPによって自社の課題や要望が明確に伝われば、制作会社は「その課題を解決するためには、こんな方法があります」「ご要望を実現するためには、この技術が最適です」といった、より踏み込んだ具体的な提案を作成できます。つまり、RFPは制作会社の専門知識や経験を最大限に引き出すためのツールでもあるのです。

メリット③ 各社の提案を公平な基準で比較・選定できる

複数の制作会社に声をかける「相見積もり」は、多くの企業が実践されています。しかし、依頼の条件が各社で異なっていては、公平な比較はできません。

RFPをすべての候補企業に提示することで、各社が同じ前提条件のもとで提案と見積もりを作成することになります。これにより、提案内容、技術力、プロジェクト体制、費用などを客観的な基準で比較検討することが可能になります。

「A社は安いけど、提案内容が薄い」「B社は高いけれど、課題解決のための具体的なアイデアが豊富だ」といったように、価格だけでなく、提案の質や自社との相性を見極め、最適なパートナーを選ぶための判断材料が揃います。

メリット④ プロジェクト開始後のトラブルを防止できる

Webサイト制作プロジェクトで起こりがちなのが、「言った、言わない」の認識のズレです。口頭での打ち合わせだけでは、後になって「こんな機能も含まれていると思っていた」「この作業は見積もりの範囲外だとは思わなかった」といったトラブルが発生しかねません。

RFPは、プロジェクトの目的や要件を明文化した「公式なドキュメント」です。発注側と制作会社、双方の認識を合わせるための共通言語となり、プロジェクト開始後の手戻りや追加費用の発生といったリスクを低減させる効果があります。

RFP作成前の4つの準備

RFPの作成に取り掛かる前に、まずは社内でプロジェクトの土台となる情報を整理し、関係者間ですり合わせておくことが極めて重要です。ここでの準備が、RFPの質、ひいては制作会社から受け取る提案の質を大きく左右します。

1. Webサイトの「目的」と「目標」を明確にする

最初に、「何のためにWebサイトを作る(リニューアルする)のか」という根本的な目的を明確にします。目的が曖昧なままでは、効果的なWebサイトは作れません。

目的の例
  • 新規顧客からの問い合わせを増やしたい
  • 企業のブランドイメージを向上させたい
  • 製品やサービスの認知度を高めたい
  • 採用活動を強化したい
  • オンラインでの商品販売を始めたい

目的が定まったら、その達成度を測るための具体的な「目標(KGI/KPI)」を設定します。数値で測れる目標を設定することで、プロジェクトの成功基準が明確になり、制作会社もゴールに向かって具体的な提案をしやすくなります。

目標(KGI/KPI)の例
  • KGI(Key Goal Indicator / 重要目標達成指標):Webサイト経由の月間問い合わせ件数を20件にする
  • KPI(Key Performance Indicator / 重要業績評価指標):
    • 月間セッション数を10,000にする
    • 問い合わせフォームへの遷移率を5%にする
    • 特定のサービスページの閲覧数を月間500にする

2. ターゲットユーザー像(ペルソナ)を具体化する

次に、「誰に情報を届けたいのか」を具体的に定義します。年齢、性別、職業、興味関心、抱えている課題などを詳細に設定した架空の人物像「ペルソナ」を作成すると、よりターゲットが明確になります。

ペルソナを具体化することで、Webサイトのデザインの方向性や、掲載すべきコンテンツの内容、使いやすいナビゲーションの設計など、ユーザー視点に立ったサイト設計が可能になります。

3. 自社の現状と競合を分析する

自社のビジネス上の強みや弱み、そして競合他社がどのようなWebサイトを運営しているかを分析します。

現状分析の例(3C分析)

自社(Company)
事業の強み、弱み、ブランドイメージ
競合(Competitor)
競合サイトのデザイン、コンテンツ、機能、SEOの状況
顧客(Customer)
ターゲットユーザーのニーズ、行動

競合サイトをいくつかリストアップし、「デザインが良い」「この機能が使いやすい」といった点を挙げるだけでも、制作会社にイメージを伝えやすくなります。

4. 予算とスケジュール(公開希望日)を決める

Webサイト制作にかけることができる大まかな予算と、いつまでに公開したいかという希望スケジュールを決定します。

予算が全くの未定だと、制作会社はどこまでの提案をすべきか判断に迷ってしまいます。「〇〇円〜〇〇円程度」といった幅を持たせた形でも構いませんので、目安となる金額を提示しましょう。

スケジュールについても、「〇月頃に公開したい」という希望を伝えることで、制作会社は実現可能なプロジェクトの進め方を提案してくれます。

提案依頼書(RFP)の構成と記載項目

事前準備が整ったら、いよいよRFPを作成します。決まったフォーマットはありませんが、一般的に盛り込むべき項目と、それぞれの書き方を解説します。テンプレートとしてご活用ください。

大項目中項目記載内容の例
1. プロジェクト概要プロジェクト名「株式会社〇〇 コーポレートサイトリニューアルプロジェクト」など、分かりやすい名前をつけます。
プロジェクトの背景・目的なぜWebサイト制作(リニューアル)を行うのか、その背景と目的を記載します。
例:「創業10周年を機に企業イメージを刷新し、若手人材の採用を強化したい」
Webサイトのゴール事前準備で設定したKGI/KPIを記載します。
例:「公開1年後に、サイトからの採用応募数を現在の2倍にする」
ターゲットユーザー事前準備で設定したペルソナを記載します。
2. 貴社について会社概要会社名、所在地、設立年、事業内容、資本金、従業員数など。
事業内容・強み提供しているサービスや製品、ビジネスモデル、競合他社と比較した際の強みなどを記載します。
現状サイトの課題(リニューアルの場合)現在のWebサイトのURLと、アクセス状況(アクセス数、流入経路など)、感じている課題点を具体的に記載します。
例:「デザインが古く、スマートフォンで見づらい」「情報が整理されておらず、目的のページにたどり着きにくい」
競合・参考サイト競合企業のサイトURLを3〜5つ挙げます。また、デザインや構成の参考にしたいWebサイトがあれば、そのURLと「どのような点が良いか」を記載します。
3. 依頼内容・要件依頼範囲どこからどこまでの作業を依頼したいかを明記します。
例:企画、デザイン、コーディング、CMS構築、コンテンツ作成、写真撮影、公開後の保守・運用など。
サイトマップ(ページ構成案)現時点で想定しているWebサイトのページ構成を記載します。
例:TOP、会社概要、事業内容、実績紹介、採用情報、ブログ、お問い合わせ、プライバシーポリシーなど。
機能要件Webサイトに搭載したい機能を具体的に記載します。
例:ブログ(CMS)、お問い合わせフォーム、実績検索機能、会員登録機能、多言語対応、SNS連携など。
デザイン・コンテンツ要件デザインのテイスト(例:シンプル、信頼感、先進的)、キーカラー、使用したいロゴや写真素材の有無などを記載します。原稿を自社で用意するかも伝えます。
サーバー・ドメインサーバーやドメインを自社で用意するか、制作会社に依頼したいかを記載します。
4. 提案依頼について提案依頼の範囲提案書に盛り込んでほしい内容を具体的に指定します。
例:会社案内、実績、プロジェクト体制、開発環境、スケジュール、見積もり(項目ごとに詳細に)、保守・運用プランなど。
選定基準どのような観点で制作会社を選定するかを伝えます。
例:課題解決の提案力、デザイン、技術力、実績、費用、コミュニケーションの円滑さなど。
選定スケジュール提案のスケジュール感を共有します。
例:RFP配布、質疑応答期間、提案締切、プレゼンテーション、選定結果通知。
質疑応答質問を受け付ける期間や方法(メール、電話など)を指定します。
提出期限・方法提案書の提出期限と、提出方法(メール添付、郵送など)、ファイル形式(PDFなど)を指定します。
担当者連絡先本プロジェクトに関する窓口担当者の部署、氏名、連絡先を記載します。

RFP作成時のポイントと注意点

RFPは、制作会社から質の高い提案を引き出すための重要なコミュニケーションツールです。作成する際に、少し意識するだけで提案の質が変わるポイントと注意点をご紹介します。

ポイント① 要件を固めすぎず、「課題」を共有する

RFPを作成する際、「あれも欲しい、これも欲しい」と機能要件を細かく詰め込みすぎてしまうことがあります。もちろん要件を伝えることは重要ですが、あまりにガチガチに固めてしまうと、制作会社はRFPに書かれた内容を実現するだけの「作業者」になってしまいます。

大切なのは、「なぜその機能が必要なのか」という背景にある「ビジネス上の課題」を共有することです。

悪い例
「トップページに動画を入れたい」とだけ記載する。
良い例
「製品の利用イメージが文章だけでは伝わりにくいという課題がある。解決策として動画が有効だと考えているが、もっと良いアイデアがあれば提案してほしい」と記載する。

このように課題を共有することで、制作会社はプロの視点から「それならば、動画ではなくインタラクティブなコンテンツはいかがでしょう?」「動画を設置するなら、このような見せ方が効果的です」といった、より本質的な提案をしてくれる可能性が高まります。制作会社を「パートナー」として、一緒に課題解決を目指す姿勢が大切です。

ポイント② 専門用語は無理に使わず、実現したいことを伝える

Web制作に関する知識が豊富な担当者の方ばかりではありません。「CMS」「API連携」といった専門用語が分からなくても、全く問題ありません。

無理に専門用語を使おうとして本来の意図が誤って伝わるよりも、平易な言葉で「何を実現したいのか」を具体的に伝えることの方が重要です。

「ブログ記事や実績を、専門知識がなくても社内の担当者が簡単に追加・更新できるようにしたい」
「自社の顧客管理システムとWebサイトの問い合わせデータを連携させて、業務を効率化したい」

このように伝えれば、制作会社がそれを実現するための最適な技術的な方法を提案してくれます。

ポイント③ 非現実的な予算やスケジュールは避ける

Webサイト制作には、それ相応の費用と時間が必要です。相場から大きくかけ離れた低予算や、極端な短納期を設定してしまうと、次のような事態を招きかねません。

  • そもそも提案が集まらない
  • 提案があっても、品質の低いものや、テンプレートを流用しただけのものになる
  • プロジェクトが開始しても、無理な進行で品質が低下したり、トラブルが発生したりする

もし予算や納期に厳しい制約がある場合は、その理由を正直に伝えた上で、「この予算内で最大限できることを提案してほしい」「この日までに最低限この機能だけは公開したい」など、実現したいことの優先順位を明確にすることが重要です。

ポイント④ 依頼先は3〜5社に絞り込む

多くの提案を比較したいという気持ちは分かりますが、依頼する会社の数が多すぎると、1社1社とのコミュニケーションが煩雑になり、担当者の負担が非常に大きくなります。また、各社の提案を深く読み込んで比較検討する時間も足りなくなってしまいます。

制作会社の実績や得意分野などを事前にリサーチし、自社のプロジェクトと相性が良さそうな会社を3〜5社程度に絞り込んでからRFPを送付するのが効率的です。

RFPはWebサイト制作成功のための羅針盤

提案依頼書(RFP)は、単に制作会社から見積もりを取るための書類ではありません。RFPを作成するプロセスを通じて自社の課題や目的が明確になり、社内の意思統一が図れます。そして、質の高いRFPは制作会社からの優れた提案を引き出し、最終的にプロジェクトの成功確率を大きく高めてくれます。

Webサイト制作という航海を成功させるための、信頼できる羅針盤。それがRFPなのです。

Webサイト制作でお悩みなら、ギャラクタスにご相談ください

「RFPの作り方がいまいち分からない…」
「自社の課題やWebサイトの目的を整理するところから手伝ってほしい」
「まずは何から始めたら良いか、プロの意見を聞きたい」

私たち合同会社ギャラクタスは、大阪を拠点に活動するWeb制作会社です。お客様のビジネスを深く理解し、課題解決に貢献するWebサイトを制作することを得意としています。

私たちは、単に言われたものを作るだけの制作会社ではありません。お客様のビジネスの成功というゴールを共有し、共に走り続けるパートナーでありたいと考えています。

RFP作成の前段階である課題のヒアリングや要件定義から、無料でご相談を承っております。Webサイト制作に関するお悩みなら、どんな些細なことでも、まずはお気軽にお問い合わせください。

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