【はじめに】なぜWordPressのセキュリティ対策が重要なのか?
「WordPressはセキュリティが弱い、危険だ」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。確かに、WordPressは世界中で最も利用されているCMS(コンテンツ管理システム)であり、その分だけ攻撃者に狙われやすい側面があります。
しかし、適切なセキュリティ対策を講じることで、WordPressサイトを安全に運用することは十分可能です。
本記事では、WordPressのセキュリティリスクの実態と、実践的な対策方法について詳しく解説します。
漠然とした不安を解消し、効果的な対策への第一歩を踏み出すために
WordPressのセキュリティについて「なんとなく心配」「危険だと聞いた」といった漠然とした不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。しかし、このような曖昧な認識のままでは、適切な対策を講じることができません。
事前に自社サイトのセキュリティ状況を適切に理解しておくことで、どのような課題があるのか、どの対策が本当に必要なのかを明確にすることができます。専門知識をより多くもつ業者に相談する際も、現状の理解があれば、より的確な提案を引き出すこともできるでしょう。
例えば、「なんとなくセキュリティが心配」「WordPressは危険だと聞いた」といった曖昧な認識ではなく、「管理画面への不正アクセスが心配」「プラグインの脆弱性が不安」「定期的なバックアップが必要」など、具体的な課題がわかれば、対策の方向性も明確になります。適切な理解こそが、効果的なセキュリティ対策への第一歩となるのです。
この記事でわかること
本記事では、WordPressの専門知識がない方でも、自社サイトのセキュリティ状況を把握できるよう、具体的なチェックポイントを「基礎編」「技術編」「運用編」に分けて解説します。
これらのチェックを通じて、サイトのセキュリティ強度を理解し、制作会社やセキュリティ会社に相談する際の基礎情報としてご活用ください。
私たちのような制作会社の視点も交えながら、実践的な内容をお届けします。
WordPressセキュリティチェックリスト
この章では、WordPressセキュリティ対策の全体像を把握することを目的に、記事内で解説するすべてのチェックポイントを一覧で確認します。
自社サイトの現状把握や、制作会社・セキュリティ会社への相談時の参考資料としてご活用ください。
| 分類 | カテゴリ | チェック項目 |
|---|---|---|
| 基礎編 | 攻撃リスクの理解 | – WordPressが狙われやすい理由の把握 – セキュリティリスクの種類と影響度の確認 – 被害事例の理解 |
| 基礎編 | 脆弱性の種類 | – WordPress本体の脆弱性 – プラグイン・テーマの脆弱性 – 設定ミスによる脆弱性 |
| 技術編 | サーバー環境 | – レンタルサーバーのセキュリティ機能確認- – SSL証明書の導入状況 – WAFの導入状況 |
| 技術編 | WordPress設定 | – 管理画面のアクセス制限 – ユーザー権限の適切な設定 – 不要なプラグイン・テーマの削除 |
| 技術編 | パスワード・認証 | – 強固なパスワードの設定 – 二要素認証の導入 – ログイン試行回数制限 |
| 運用編 | 定期的な更新 | – WordPress本体のアップデート – プラグイン・テーマのアップデート – セキュリティ情報の確認 |
| 運用編 | バックアップ | – 定期的なバックアップ取得 – バックアップの復元テスト – バックアップの保存場所の確認 |
| 運用編 | 監視・診断 | セ- キュリティプラグインの活用 – ログファイルの確認 – 不正アクセスの監視 |
第1章:【基礎編】WordPressのセキュリティリスクを正しく理解する
WordPressサイトのセキュリティを強化するためには、まず攻撃者がどのような方法でサイトに侵入を試みるのか、そしてどのような被害が発生する可能性があるのかを正しく理解することが重要です。ここでは、WordPressが攻撃者に狙われやすい理由と、具体的なセキュリティリスクについて詳しく解説します。
1-1. なぜWordPressは攻撃者に狙われやすいのか?
WordPressが攻撃者に狙われやすい理由は、その人気と使いやすさにあります。WordPressは世界中のウェブサイトの43.7%で使用されており、CMS市場でのシェアは62.2%を占めています。攻撃者の視点から見ると、効率的に多くのサイトに攻撃を仕掛けられる魅力的なターゲットなのです。日本国内でも多くの企業サイトがWordPressで構築されており、攻撃者にとって魅力的な市場となっています。
また、WordPressはオープンソースソフトウェアのため、誰でもソースコードを確認できます。これは開発者にとっては利点ですが、攻撃者にとっても脆弱性を発見しやすい環境となっています。ソースコードが公開されていることで、標準化されたファイルやディレクトリ構成も把握することができ、脆弱性も発見されやすい構造になっています。
さらに、WordPressは使いやすいCMSとして設計されているため、セキュリティ知識が不足している初心者ユーザーも多く利用しています。デフォルト設定のまま使用したり、パスワードの設定が甘かったり、定期的なアップデートを怠ったりするユーザーが多く、これが攻撃者にとって格好の標的となってしまうのです。
1-2. WordPressに潜むセキュリティリスクと具体的な被害事例
WordPressサイトが攻撃された場合、どのような被害が発生するのでしょうか。実際の事例を交えながら、具体的なリスクについて解説します。
主な被害の種類
- 情報の改ざん:ホームページの内容が勝手に書き換えられる。正しい情報が表示されなくなることで、企業の信頼性が大きく損なわれる可能性があります。
- 情報の漏えい:顧客の個人情報が流出する深刻な問題。機密情報が外部に漏れることで、法的責任を問われる可能性もあります。
実際に発生している攻撃事例
- スパムメール送信の踏み台:WordPressのメール送信機能を悪用し、大量のスパムメールを送信する攻撃が多発。サイト運営者が知らない間に加害者となってしまうケースがあります。
- フィッシング詐欺サイトへの改ざん:偽の決済ページやログインページを作成し、訪問者の個人情報を盗み取る攻撃。特にECサイトを運営している企業が狙われやすい傾向にあります。
- 他システム攻撃の踏み台:サーバーが他システムへの攻撃の踏み台にされるケースも報告されています。DDoS攻撃やブルートフォース攻撃の加担者として利用されることで、サイト運営者に直接的な被害がなくても、間接的に加害行為に関わってしまう可能性があります。
1-3. WordPressの脆弱性とは?本体(コア)と拡張機能に注意
WordPressのセキュリティリスクを理解するためには、脆弱性の種類と発生箇所を正しく把握することが重要です。脆弱性とは、プログラムの設計ミスや不具合によるセキュリティ上の欠陥(セキュリティホール)のことです。この欠陥を悪用することで、攻撃者は不正アクセスや情報の改ざんを行います。
WordPress本体の脆弱性は、定期的なアップデートで対応可能です。WordPress開発チームは脆弱性が発見されると、迅速に修正版をリリースしています。つまり、定期的なアップデートの実施、セキュリティ情報の確認、公式サポートの活用が重要な対策となります。
一方、プラグインやテーマの脆弱性は、開発者ごとの安全性の配慮にばらつきがあるため、特に注意が必要です。信頼できる開発者のプラグインを選ぶ、定期的なアップデートの実施、不要なプラグインは削除する、セキュリティプラグインの導入などの対策が効果的です。
第2章:【技術編】サイトの土台は大丈夫?セキュリティ基盤をチェック
WordPressサイトのセキュリティを強化するためには、まずその技術的な基盤が堅牢であることが不可欠です。デザインが洗練されていても、素晴らしいコンテンツが掲載されていても、セキュリティの基盤が脆弱であれば、攻撃者にとって格好の標的となってしまいます。
ここでは、サイトの見えない土台とも言える部分に焦点を当て、制作会社としても特に重要視するチェックポイントを詳しく見ていきます。
2-1. サーバー環境は安全に設定されている?
大前提として、WordPressサイトのセキュリティを確保するためには、その基盤となるサーバー環境が安全に設定されている必要があります。どれだけWordPress側でセキュリティ対策を講じても、サーバー自体に脆弱性があれば、攻撃者にとって格好の侵入経路となってしまいます。
実績豊富なレンタルサーバーを選ぶ
WordPressセキュリティ対策機能が充実しているレンタルサーバーを選択することが重要です。WAF(Web Application Firewall)の導入、自動バックアップ機能、SSL証明書の無料提供、不正アクセス監視機能などが標準搭載されているサーバーを選ぶことで、基本的なセキュリティレベルを確保できます。
ホームページをSSL化する(HTTPSを導入する)
HTTPS(Hypertext Transfer Protocol Secure)は、Webサーバーとブラウザ間の通信をSSL/TLSという技術を用いて暗号化するプロトコルです。これにより、第三者によるデータの盗聴や改ざん、なりすましを防ぐことができます。Googleは数年前からHTTPSをランキングシグナルの一つとして利用しており、現在ではWebサイト全体をHTTPSで保護する「常時SSL化」が標準的なセキュリティ対策となっています。
ブラウザのアドレスバーを確認し、URLが https:// で始まっており、鍵マークが表示されているかを確認しましょう。もし未だに http:// で運用されている場合は、セキュリティリスクとSEO上のデメリットの両方があるため、可能な限り早急にSSL/TLS証明書を導入し、HTTPS化を完了させるべきです。
2-2. WordPress設定は適切に管理されている?
WordPress自体の設定も、セキュリティ強化において重要な要素です。
デフォルト設定のまま使用していると、攻撃者にとって格好の標的となってしまいます。
管理画面のユーザー名、パスワードの強化
WordPressの管理画面にアクセスするためのユーザー名とパスワードは、サイトのセキュリティを左右する最も重要な要素の一つです。ユーザー名とニックネームを分けることで、攻撃者がユーザー名を推測しにくくなります。また、9文字以上の強固なパスワードを設定し、定期的なパスワード変更を心がけることが重要です。
ユーザー権限を適切に設定する
WordPressでは、ユーザーごとに異なる権限を設定することができます。管理者権限は必要最低限のユーザーにのみ付与し、編集者や投稿者など、業務に応じた適切な権限を設定しましょう。権限の設定を誤ると、意図しない情報の漏えいや改ざんにつながる可能性があります。
不活用プラグイン・テーマは削除する
使用していないプラグインやテーマは、停止するだけでなく完全に削除することで、リスクを排除します。停止したプラグインでも、ファイルが残っている限り脆弱性を突かれる可能性があるため、不要なものは積極的に削除することが重要です。
2-3. アクセス制限は適切に設定されている?
WordPressの管理画面(wp-admin)は、攻撃者にとって最も狙われやすい部分の一つです。適切なアクセス制限を設定することで、不正アクセスのリスクを大幅に軽減できます。
管理画面(wp-admin)へのアクセス制限をかける
Basic認証などで前段階のセキュリティを強化することで、管理画面への不正アクセスを防ぐことができます。また、特定のIPアドレスからのみアクセスを許可する設定も効果的です。
ログイン試行回数制限の設定
ブルートフォース攻撃(総当たり攻撃)を防ぐため、ログイン試行回数制限を設定しましょう。一定回数以上ログインに失敗した場合、そのIPアドレスを一時的にブロックする機能を導入することで、攻撃を未然に防げます。
2-4. セキュリティツールは適切に活用されている?
WordPressのセキュリティを強化するためには、専用のセキュリティプラグインを活用することが効果的です。
セキュリティ用プラグインの設置
SiteGuard WP Plugin、All In One WP Security & Firewall、CloudSecure WP Securityなどのセキュリティプラグインを導入することで、包括的なセキュリティ対策を実現できます。これらのプラグインは、不正アクセスの監視、ファイルの改ざん検知、スパム対策など、多岐にわたる機能を提供します。
bot対策ツールの活用
悪質なbotによる不正アクセス対策として、「reCAPTCHA」や「Cloudflare Turnstile」の導入が効果的です。ログインページやコメントフォームなどに設置することで、自動化された攻撃を防ぐことができます。
第3章:【運用編】継続的なセキュリティ管理でリスクを最小化する
WordPressのセキュリティ対策は、一度設定すれば終わりではありません。継続的な管理と監視により、リスクを最小化することが重要です。ここでは、日常的な運用において実践すべきセキュリティ対策について詳しく解説します。
3-1. 定期的な更新は適切に行われている?
WordPress本体、テーマ、プラグインの定期的なアップデートは、セキュリティ対策において最も重要な要素の一つです。脆弱性が発見されると、開発者側で迅速に修正版がリリースされるため、常に最新バージョンに保つことが重要です。
WordPress本体のアップデート
WordPress本体の脆弱性は、定期的なアップデートで対応可能です。WordPress開発チームは脆弱性が発見されると、迅速に修正版をリリースしています。管理画面に表示される更新通知を確認し、速やかにアップデートを実行しましょう。
プラグイン・テーマのアップデート
プラグインやテーマの脆弱性は、開発者ごとの安全性の配慮にばらつきがあるため、特に注意が必要です。定期的にプラグインの更新状況を確認し、不要なプラグインは削除することを心がけましょう。
3-2. バックアップは適切に取得されている?
不正アクセスや不具合発生時の復旧手段として、定期的なバックアップは必須です。バックアップが適切に取得されていれば、万が一の事態が発生しても迅速に復旧することができます。
定期的なバックアップ取得
WordPressサイトのバックアップは、データベースとファイルの両方を対象に行う必要があります。多くのレンタルサーバーでは自動バックアップ機能が提供されているため、これを活用することをおすすめします。
バックアップの復元テスト
バックアップを取得するだけでなく、定期的に復元テストを実施することで、バックアップの信頼性を確認できます。実際に復元作業を行ってみることで、問題が発生した際の手順を確認できます。
3-3. 監視・診断は適切に行われている?
セキュリティ対策を講じていても、100%安全ということはありません。定期的な監視と診断により、リスクを早期発見することが重要です。
セキュリティプラグインの活用
セキュリティプラグインを導入することで、不正アクセスの監視やファイルの改ざん検知を自動化できます。異常が検知された場合は、即座に通知を受け取ることができるため、迅速な対応が可能です。
ログファイルの確認
サーバーのログファイルを定期的に確認することで、不正アクセスの痕跡を発見できる場合があります。アクセスログやエラーログを確認し、不審な活動がないかをチェックしましょう。
セキュリティ診断ツールの活用
WPScans.comやWPdoctorなどのセキュリティ診断ツールを活用することで、サイトの脆弱性を客観的に評価できます。定期的に診断を実施し、発見された問題点を速やかに修正することが重要です。
第4章:チェック結果をどう活かすか?
上記の診断ツールの結果から懸念点が見つかったら、それらを具体的な改善アクションに繋げていくことが重要です。
ただチェックして終わりではなく、得られた情報を整理し、次に何をすべきかを明確にしましょう。
課題の洗い出しと優先順位の付け方
各チェック項目とツールの分析結果から、自社サイトが抱える問題点や改善すべき点をリストアップします。例えば、「管理画面へのアクセス制限が不十分」「プラグインの更新が遅れている」「バックアップが取得されていない」「セキュリティプラグインが未導入」など、具体的に記述します。
洗い出した課題に対しては、その影響度(放置した場合のリスクや、改善した場合の効果の大きさ)と改善の実現可能性(必要な工数やコスト)を考慮して、優先順位を付けましょう。全てを一度に解決しようとするのではなく、インパクトが大きく、比較的取り組みやすいものから着手するのが現実的です。
具体的な改善アクションプランの検討
優先順位の高い課題に対して、具体的な改善策を検討します。「管理画面へのアクセス制限が不十分」であれば、Basic認証の導入やIPアドレス制限の設定を検討します。「プラグインの更新が遅れている」であれば、定期的な更新スケジュールの策定や、不要なプラグインの削除を検討します。
誰が、いつまでに、何を行うのか、具体的なアクションプランに落とし込むことが重要です。
制作会社・セキュリティ会社への効果的な情報共有方法
自社での対応が難しい課題や、より専門的な分析・改善が必要な場合は、外部の制作会社やセキュリティ会社への依頼を検討することになります。その際、ここまでのチェックで得られた情報は、非常に有効なコミュニケーションツールとなります。
依頼時には、以下の情報を明確に伝えることで、業者側も的確な提案や見積もりをしやすくなり、認識の齟齬を防ぐことができます。
現状の課題
「WPScans.comで〇〇の脆弱性が検出された」「管理画面への不正アクセスが心配」「プラグインの更新が定期的に行えていない」など、客観的なデータや具体的な状況を伝えましょう。
達成したい目標
「セキュリティレベルを向上させたい」「不正アクセスのリスクを最小化したい」「定期的なセキュリティ監視体制を構築したい」など、具体的かつ測定可能な目標を設定し、共有します。
予算感
どの程度の予算を考えているのかを事前に伝えておくことで、予算内で実現可能な対策の提案を受けやすくなります。
まとめ
今回のチェックポイントを通じて、自社サイトのセキュリティ状況について、ある程度の理解が深まったのではないでしょうか。WordPressのセキュリティ対策は一度行えば終わりではなく、攻撃手法の進化や新しい脆弱性の発見に合わせて、継続的にサイトの状態をチェックし、改善を続けていくことが重要です。
定期的なセキュリティチェックでサイトの安全を保つ
今回ご紹介したようなチェックを定期的に(例えば月に1回、四半期に1回など)行い、サイトのセキュリティ状況を把握する習慣をつけましょう。問題点を早期に発見し、対処することで、大きなトラブルを未然に防ぐことができます。
課題を明確にして、最適なパートナーを選ぼう
自社サイトのセキュリティ課題が具体的になっていれば、制作会社やセキュリティ会社に依頼する際にも、より的確な要望を伝えることができ、自社の目標達成に本当に貢献してくれるパートナーを見つけやすくなります。
Web制作会社に相談し、プロのサポートを受けることの重要性
セキュリティ対策は専門性が高い分野です。不安な点がある場合は、専門知識を持つWeb制作会社に相談し、プロのサポートを受けることをおすすめします。
合同会社ギャラクタスでは、WordPressサイトのセキュリティ強化から、問題発生時の緊急対応まで、包括的なサポートを提供しています。お気軽にご相談ください。
本記事が、そのための第一歩となれば幸いです。